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映画『ニトラム』見た

GWに見た映画の話。

 

ニトラムっていう映画を見てきたのですが、徹頭徹尾地獄であった……
96年にタスマニアで実際におこった無差別銃乱射事件を元に、犯人はなぜ事件を起こすに至ったかを描いているのですが、
ド頭から不穏なフラグ(*1)だし、ずっと不穏なフラグしか立たないし、最後も絶望(*2)だし、
フィクションならどこかしらで救いの手に引っかかったり、最後はほのかな希望の光なんぞが見えてきたりするもんですが、
まぁこれも現実よな……不幸はたいてい不幸を連れてやってくるよと思ったり、なんでわたし休日にわざわざ地獄を見に来ちゃったのかしらねと思ったり。


何にひかれて見に行ったかって、昔から犯罪心理に興味があるからなんですが……どうしてそうなった、って知りたいのよね……人間というものを知りたいのだと思う。一般には理解しがたい犯罪をおこなうのは、特異な例ではあるのだろうけれど。


見てる間は一度も浮上しなったんですが、見た後はなんか元気になった。なぜだ。落ち切ったからか。見る前にあまりに気分がマイナスに下がることがあって、かけ合わさってプラスになったのか。
まぁでも、いい映画だったってことなのかな……。


実際の事件は何故起こったのかわかってないってWikiに書いてあった。ので、実際のところは映画観たってわからないのだけど。
映画の中では、主人公がASDっぽく描かれていたと感じました。(実際の犯人は、知的障害ありだが、責任能力ありとのこと。)
とにかく両親が大変よ。お父さんはいろいろと息子のために腐心しているのだが、お母さんは息子のことが理解できない。


ただ、どこにも、ひとつも、ボタンの掛け違えなんかなかったと思う。それは、彼ら家族が取りうる選択肢は、そのときはほかに何も見えなかったという意味で。
彼のことをもう少しわかってあげられていたら、という部分は、そりゃ外から見たらあるけれど、渦中では無理ゲーですよ。
彼自身は、ちゃんと自分のことわかってたんだけどな。
ボタンがあっても、ボタンホールがなかったら、どうしようもないよね。そんな感じ。


掛け違えがなかったのなら、じゃあ銃乱射の結末へ一本道だったのかって話なんだけど……わたしはなんとなく、この映画では、その手前だけちょっと飛躍したように感じたんだよね。そこまではきちんと繋がってたと思うんだけどな。わたしが汲み取れなかっただけの可能性ももちろんある。


2022年の今だったら、昔よりはどこかしらの支援の手につながる可能性あるよね、くらいしか光が見えん。


とりあえず主人公を繊細に演じた役者さんがすごかったなー
基本的に悪気がないのよ。でも怒られたりうまくいかなかったりする。それで傷ついて、ちょっとずつ悲しみだとか、憎悪や恨みが積み重なっていく。
基本、表情があまり豊かではないから、目の色での芝居。絶妙。


あとストーリー自体は、割とたんたんと、静かに進んでいっていた。これ日本だとこういう感じのあんまり見ない気がする。「ニトラム」っていうのは主人公のあだ名で、本人は嫌がっているのをわかってて言ってくる人がいるのですが、あんな静かなトーンで煽るシーン見たことない。あとお母さんもヒス起こして叫んだりしない。諦めきっている。


新宿シネマカリテにて5/5までやってますが、どういう人が見たいと思うんだろうか。(わたしだ)


ネタバレっぽいところは以下。


*1)ド頭から不穏なフラグ……始まり方が、火遊びしていてやけどをした少年の音声なのだけど、経緯を話して、もうしません、で結ぶのね。で、今度は別の子の映像、花火で遊んでやけどをして入院してる子のインタビュー。「もうしない?」「するよ」「懲りてないの?」「懲りたけど、また花火はやるよ」って。こ、これは……あかんやつやん……。「懲りてない」の方がまだいいぞ……。これ、おそらく本人の本物の映像じゃないかしらって思ったんだどどうなのかな。劇中で、子どものころテレビに取材されたって言ってたのが本当なら。


*2)最後も絶望……事件後、オーストラリアでは銃は即刻規制され、銃は国が買い上げたんだけど、それは完全ではなく、当時より今の方が銃の数は出回っているんだってさ。なんてこったい。